基礎科学実験Aと基礎科学実験の実験テーマの概要を掲載しています.基礎科学実験Aでは全12実験課題から10課題を予め割り当てられた課題を順次行います.基礎科学実験では以下のテーマ中アスタリスクが付いている7課題から予め割り当てられた6課題を行います.

 

重力加速度の測定*

 長さがおよそ1mの振り子を用い,重力加速度 $g$ を有効桁数4桁で測定します.精度を満たすために,振り子の周期の計測には「合致法」という方法を用います.

 

音の共鳴*

 共鳴管中に軽量粉末を封入して共鳴させると,管内に不思議な模様が生じます.これを利用して音速を求めます.伝統的な手法では軽量粉末の振動の強弱を目で見て,共鳴振動数を決定します.この実験では「強弱」を数値データとして計測することも行います.

 

液体の比熱*

 熱容量 $L$ の液体試料に単位時間当たりの熱量 $Q$ を加え,熱を加えた時間 $t$ と上昇温度 $T$を測定すれば $Qt=LT$ から熱容量(従って比熱 $C$) が分かります.また同じ液体試料を温度 $T_m$ まで上昇させ,これを自然に冷却した時の時間と温度の関係を調べれば,これはNewtonの冷却則に従いますからやはり比熱を求めることができます.この実験では加熱法,冷却法によって液体試料の比熱を測定します.

 

等電位線*

 導電性のカーボン紙上に電流を流せば,流れる電流線に直交するように等電位線が現れます.この実験ではカーボン紙上に指示された形の電極を作図し,電圧計で等電位線を求めます.得られた等電位線は,理想的な場合の等電位線と測定結果を比較して考察します.

 

電気回路

 コイル,コンデンサと抵抗を直列につないだ回路に直流電源を加えると,内部の電流は振動するように流れます.電流がどのように流れるかは,理論的に良く分かりますから,この実験では実際に回路を作成して電流がどのように流れたかを調べて,理論から予測される値と比較をして考察をします.

 

ヤング率

 材料に荷重をかけるとたわみを生じます.荷重が材質ごとに決まる範囲の間は,荷重を取り去ることで,材料にはたわみは残らず元の形にもどります.この領域では,荷重とたわみの関係は直線的であることが知られており,直線の傾きがヤング率と呼ばれています.この実験では実際に幾つかの材料に荷重をかけて,たわみを計測することでヤング率を求めて文献値と比較します.

 

粘性率と表面張力

 毛細管を流れる流体の流速は粘性があるため一様になりません.ポアズイユの法則から,毛細管中の単位時間当たりの流量は毛細管半径の4乗と圧力差に比例し,粘度に反比例するという関係が成り立つと考えられます.この実験では,このような関係を利用し,水,エチルアルコールとそれらの混合系について粘性率と表面張力を求めます.特に水とアルコールの混合系は非常に豊かな物性を示し興味深い試料となっています.

 

光電効果

 金属面に特定の条件を満たす光をあてると,金属から電子が飛び出してくることは光電効果として知られています.この現象を理解するためには,光は波でなく粒子として振舞い,そのエネルギーは振動数 $\nu$ とプランク定数 $h$ により $h\nu$ と表わさせると考える必要があります.飛び出す電子の運動エネルギーを $K$ ,電子が金属面から飛び出すのに必要なエネルギー(仕事関数)を $W$ とすると,$K=h\nu-W$ となります.この実験では実際に色々な振動数の光を金属にあてて,飛び出す電子の運動エネルギーを求めてプランク定数と仕事関数を求めて文献値と比較します.

 

光のスペクトル*

 回折格子(格子間隔 $d$ )分光計によりランプの光を分光し,回折角 $\theta$ を測ることができます.$m$ 次の回折角 $\theta_m$ と回折項の波長 $\lambda$ および格子間隔 $d$ の関係は $d\sin\theta_m=m\lambda$ で与えられますから,この実験ではナトリウムのD線の波長を既知として $d$ (実際には逆数の格子定数 $N$) を求め,次に水素などのスペクトルランプにより各色のスペクトル光の波長を求めて文献値と比較します.格子定数は4桁の精度で600.0本/mmとなっています.

 

光速度の測定

 赤色半導体レーザーを使って空気中の光速度を求めて文献値と比較します.また,同軸メタルケーブル中の電気信号の速度を計測します.同軸ケーブル中の電気信号速度の詳細な値はケーブルの形状や材質により異なりますが,おおよそ真空中の光速度2/3となっています.

 

エア・トラックによる力学実験*

 エア・トラックは摩擦が極めて小さい運動を観察できる装置です.この実験では運動体の速度を計測し,実験データから空気抵抗(粘性抵抗と慣性抵抗)の大きさを求めます.また,反発係数や運動量といった数値を測定して速度依存性や保存則といったことについて考察を行います.

 

放射線の計測*

 ガイガー・ミュラー計数管により自然放射線の測定や,放射線源を使った $\beta$ 線の単位時間当たりの計数値の測定を行い,得られた測定値を処理することで,統計分布に従っていることを見出します.さらに,線源と計測装置の間に遮蔽物を置き, $\beta$ 線の遮蔽の様子を測定します.この測定値から各種材質の吸収係数や質量吸収係数を求めます.

 

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